もしも急に、親が歩けなくなったら?
もしも急に、親が寝たきり生活になったら?
もしも急に、親が自分の顔を思い出せなくなったら?
もしも、もしも、親に介護が必要になったら?? それも、自分は一人っ子とか・・!!きゃーー!!!! というわけで、今回はそれを考えてみます。マネージャーの井上です。
家族介護が圧倒的に多い日本
親に介護が必要になった場合、まずは家族が介護をすることになります。当然身内で一番近い家族、夫または妻、嫁、娘、特に女性が介護を担うケースが多いようです。
夫や妻が先立った場合には、必然的にその子供が介護をすることになります。
イ 主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在
要介護者等からみた主な介護者の続柄をみると、6割以上が同居している人が主な介護者となっている。その主な内訳をみると、配偶者が26.2%、子が21.8%、子の配偶者が11.2%となっている。また、性別については、男性が31.3%、女性が68.7%と女性が多くなっている。
要介護者等と同居している主な介護者の年齢についてみると、男性では69.0%、女性では68.5%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在していることがわかる(図1-2-3-10)。
「団塊の世代ジュニア」にあたる私も介護問題が身近に感じられるようになってきました。
それは昨年、久しぶりに実家に帰ったときに実感した出来事です。
まだ私の親は、介護を受けるほどの年齢ではないのですが、「これは明らかに老いが近いのかも??」と感じることが色々ありました。
おそらく、自分が介護の仕事をしているから感じたことであり、数年会っていなかったことで、その老化という変化に衝撃的に感じたのだと思います。
親が老いていくことは悲しい現実であり、否が応でも受け入れていかないといけないことなのかもしれません。そこで私が感じた「高齢の親の変化や、それを見逃さない7つのポイント」について紹介します。
1.歩きかたや歩行速度が変わった!!
まず私がはじめに違和感(少し今までと違うな?)を感じたのは「歩くスピード」。
今までは、並んで歩いていたのが、ふと気が付けば、やや後ろをついてきています。こちらが立ち止まらないと、親との距離はドンドン差がついてしまいます。そして、足を少しだけひきずって歩くのです。
つま先が上がっていない、すり足のような感じで歩いています。
そして、色々と聞いていると、転倒した話が何度か出てきました。転倒は、高齢になると命にかかわることです。
特に注意を要するのが、夜のトイレ!!薄暗い中を歩いて移動する時に転んだ場合、怪我をしてしまう可能性があります。
また、高齢者の場合、睡眠薬の服用をしている人が結構多い。もしも、起きたとき、薬の影響でふらつく場合は注意が必要です。万が一、足や腕を骨折すると、そおのまま寝たきりになる場合もあります。
夜間に転んでしまうと、同居でも家族が気づかず、そのままの状態で夜を過ごしてしまうことも。もし、「転倒した」と言ったりする場合は、特に注意してみてあげて欲しいと思います。
2.整理できない、でも物は増える
ゴミ屋敷を想像するかもしれませんが、それとは少し違うのです。
片づける意欲はあるけど、気力と体力が上手くマッチしない、そういった問題です。
特に40~50年と引っ越しもなく持ち家で生活していると、とにかく色々な物が増えていきます。昔は少し物が増えていけば、すぐに整理していたのに、物の量と身体の動きが反比例して、すぐには片付けられない、物が増えれば、益々片付かない、そういった悪循環になります。
特に細かい雑貨や薬、重い本や新聞の束、中身の入った段ボール箱、そして親類縁者が多い場合は贈答品が増え、使うことも、処分することもできずにそのまま押し入れやクローゼットに積まれてしまいます。
また、女性で多いのは、洋服やバック類など。高齢になれば、普段着る物はだいたい決まってきます。昔の華やかな洋服は、ほとんど着る機会が少なくなってきます。(外出と言っても通院などが多くなる)
でも、たとえ着なくても、なかなか処分はしづらいものです。
私の母は、母の日に贈ったバックなどを使ってくれていました。でも、高齢になればなるほど、「形のあるもの」を贈る事よりも、「消えてなくなるようなもの」(食べ物やお花など)の方が、かえっていいのではないかと考えるようになりました。
3.合わないメガネを使っている
高齢になれば老眼がすすんだり、白内障になったりと、視力の変化と使っているメガネが徐々に合わなくなってきます。
ものがよく見えないと、
- つまずきやすくなり、転倒が増える
- 薬を落としたり、飲み間違えたりする
- 細かい物がみえないので、掃除や片づけが行き届かない
- 物を書くことが億劫になる(書くことが少なくなる)
- 読書やテレビや新聞等を見る機会が減り情報に疎くなる(脳が活性化しない)
以前、担当していた利用者さんが、転倒のあとにメガネを壊してしまい、しばらくそのままの生活を送っていました。その後、転倒が徐々に増え、同時に認知症が進んでしまったのです。
私の母の場合は、白内障の手術をして今年で2年経過していました。今回帰省した時に、「老眼鏡が合わない、近眼のメガネも度が合わない」と嘆いていたので、強引にメガネ屋さんに連れていき、メガネを2つ同時に作ってもらいました。万が一、壊しても大丈夫なように。
4.入れ歯が合わない、むせこむ
目と同じ位、大事なのは歯です。
歯の噛み合わせは全身の健康に密接にかかわりあっていて、いろんな影響が出ます。
歯が悪くなることで、
- 食が細くなる
- かむ力が弱くなる
- 結果、胃腸がわるくなり、働きが弱くなる
- 硬い物や食感の良い物が食べられなくなる
- おいしくものが食べられなくなり、食に興味がなくなる
- 転倒が増える(食いしばることができないのでバランスがわるくなる)
- むせることが増えて誤嚥性肺炎を起こす
おいしいものを食べることは、生きていくという張り合いになります。よく「食べ物をしっかり食べている人は長生きをする」といわれますが、寝たきりの人でも“食事がたのしみ”という人は、それが生きがいになっていることが多いのです。
私の親の場合は、入れ歯が合わなくて歯ぐきが痛いと言っていましたので、
私 「歯医者に行ったら?」
親 「何度も歯医者にいったら、先生がいやがるでしょ」
私 「そんなの、気にすることないのよ、先生はそれが仕事なのだから」
親 「いつか、総入れ歯にしようかと思っているからいいの」
私 「!!!!」
総入れ歯にすると、自分の歯より噛む力が1/5~1/6まで低下するようです。そして、食いしばることができないので、顎にも負担が増えます。
おいしく何でも食べるためには、自分の歯で食べることが何よりも重要。ですから、虫歯が無くても、定期的に歯科受診をして、歯のメンテナンスを行うことがとっても大切です。
(海外のビジネスマンは自分の歯の自己管理がしっかりできていないと、自分の身体の管理ができない、いわゆる仕事もできない人と思われるようです。)
5.買い物はできる?料理はできる?
次のチェックポイントは「料理」についてです。
私はこれに関しても、自分の母が「できているのか?」とチェックをしてみていました。まずは、以下をチェック。
- ガスコンロをつけられるか
- 火はすぐに消しているか
- 食材の切り方が変わっていないか、
- 味付けがおかしくないか
- 冷蔵庫に古い食品がたまっていないか
どれも大事ですが、私の母の場合は「味付け」に関して少し気になりました。
以前より味付けが薄くなったので、ズバリ聞いてみました。
すると、
「血圧が高いから薄味にしている」
と言われたので、健康に気をつけているだけなのね・・と、安心しました。
高齢者の場合、特に多いのが、冷蔵庫に古い食品がいっぱい残っているケースです。
買ったことを忘れてしまい、同じものを何度も買ってしまう。→ 一人で食べきれないので、賞味期限が切れてしまう。→ その結果、捨てることもできずに、冷蔵庫内に残ってしまう。
そして、また新たに同じものを買ってくる・・・・という悪循環に陥ります。
もし、ご自分の実家の冷蔵庫を見る場合は気を付けてください。
- 賞味期限が切れている食品がないか?(多少はしょうがないです・・)(腐った牛乳がないか?何か月も前の卵が残っていないか?)
- 野菜室の野菜がドロドロしていないか?
- 同じ食材や調味料が大量にないか?
以前、担当したおひとり暮らしの利用者さんは、ご自分で生協を頼んで注文をしている方でした。同じ洗剤が数十本、ラップが何十本も買ってあり、そのまま残っている状態でした。
生協では、注文して届く日が1週間後なので、頼んでもそれを忘れてしまい、続けて頼んでしまうようです。もし、生協を頼んでいるような親御さんがいれば、注意してみましょう。
料理は、①何を作るかを考えて、②材料や調味料を用意し、③手順を考えながら調理するという、結構、複雑で、頭を回転させながら、身体も動かす作業です。
「料理ができる」ということは順序だてて、物事が考えらえて、必要なものを購入でき、味付けがきちんとできるということです。
「料理」は、家事の中でも難しい作業で、高齢者のレベルを図ることが出来ます。
6.近所付き合いしてますか?
都会と違って、地方にいくほどに、親戚が多く、近所付き合いが生活のすべてになります。
誰が結婚した、誰が入院した、どこの家では3人目の孫が生まれたとか、都会ではあまり気にしないことが、田舎では大ニュースとなって近所を駆け巡ります。田舎に帰るとなぜこんなに、他人の話が色々飛び込んでくるのか不思議なくらいです。
さて、先日実家に帰った時に、やることもないので母とぶらぶら近所を散歩して歩いていました。
母の様子を見ていると、出会った人に、ひとまず朝の挨拶をし、近況を少し話したりします。 「この家はこうで、ああで」と私に説明してくれたり、なんとなく近所の様子は把握しているのが分かり、ホっとしました。
誰かと毎日話すということは、独り暮らしでは、なかなかできないものです。
自ら外にでて、他者に働きかける事は、自分の存在を分かってもらうことでもあります。
その人の生活やキャラクターにもよりますが、定年で仕事がなくなると、どうしても外に出る機会が少なくなってきます。さらに、高齢になれば少しずつ足腰も悪くなるので、徐々に外出が億劫になってしまいがち。
どうやって他人と接する時間をつくるか? 定期的にかよえる居場所を作るか?
毎日、とにかく誰かと話すこと、たったこれだけのことですが、意外と大事な習慣なのです。
7.薬を自己管理できる
最後は高齢者といえば切っても切れない薬の管理についてです。
高齢になれば、どんなに元気な人でも薬の1つや2つ?いや、10粒くらいは軽く飲んでいると思います。
薬で大事なことは、「決められたタイミングに、処方通りの薬を、忘れずに飲めるか」です。
特に問題となるのは、
- 飲み忘れ
- 自分で勝手に飲み方や量を変える
- 水ではなく、お茶などで飲んでしまう
などではないでしょうか。
飲み忘れについて
視力の悪さから、手に取った薬を落としてしまう方もいます。
特に複数の薬を1袋に入れてもらっている場合(一包化)、きちんと全部を確認しないため、足元に落ちたままの方がいます。目は見えにくいし、かがむのもつらい場合にはそのままです。
私の母の場合は、相当大きなお薬ケースに1週間分小分けにしてあり、飲んでいるようでした。足元には何個か薬が落ちていましたが、やはり眼鏡の度が合わなくて、気がついていないようでした。
自分で勝手に飲み方や量を変える
薬でこわいのは、自分で量やの見方を調整してしまうことです。特に睡眠薬(睡眠導入薬)などは量が増えるととても危険!!こまめに先生と処方量を確認して、体格に合った薬の量でないと危険です。薬は自己管理ができなくなった場合(どうしても服用が必要な方)はサポートを受けることも検討していきます。(服薬管理は介護保険が使えます)
まとめ
日本人の寿命は延びていて、いずれ「自分が」「親」を介護する日がやってきます。
特に、認知症は早い段階で気づくことがとても大事です。でも、親にもプライドがあります。こっそりどのくらいか、見極めるのにこの7つのポイントはぜひ、見てください。
動物と違い、人間だけが親の介護ができる生き物だそうです。
まずは、親の変化を見逃さない事、そして人は老いていく生き物だと理解すること。
介護をする側の子供にも、自分の家庭があり、生活があります。
私たち、介護に関わっているスタッフが、いろんなお宅の色んなケースを見続けて思うことがあります。親の介護をいつかは自分の手から離し、他人に任せることも一つの方法なのだ。と。親と子には、特別な関係があります。親だから、子だからこそ、上手くいかないことも、苦しむこともあります。
いろんなサービスを使いながら、親子の関係を崩さず、良い親子関係を継続するための方法は色々あります。そのために私達スタッフは少しでも家族の力となれるように日々努力を続けているので