マネージャーの井上です。
私たちの使命は、利用者さんに
- 生活に張合いを持ってもらう。
- 誰かが訪ねてくれるんだと安心してもらう。
介護施設とは違うのです
これから介護職をやってみたいという方。
実は、「施設介護」と「訪問介護」では全く違います。「施設介護」は、建物の中で、「訪問介護」は、1件、1件回らないといけない。雪の日や雨の日、暑い日、寒い日など大変だなあ・・と思われるかもしれません。
でも実は、その分、たくさん、「いいこと」が経験できます。
「施設介護」と「訪問介護」の違いは色々ありますが、私が「訪問介護」の仕事をしていて、“よかった!!”と思ったこと、経験したことをご紹介します。
「訪問介護」もいいなあ、してみようかな、と思っている方はぜひ読んでほしい! そう思います。
短時間でいろんな家に行くからこそ、リセットできる
「施設」と「訪問」では、利用者さんに向き合う時間が圧倒的に違います。
「訪問介護」は、20分で終わる場合もあれば、4時間、5時間(自費部分も含む)とロングで仕事をするときもあります。
20分の場合は、「服薬の確認」や「おむつ交換」だけとか、本当に“それのみ”をして退室をします。
4時間の場合は、介護保険で算定できない見守り的なことも含む場合が多いので、朝食が終わって、利用者さんがお休みになっているときに、お部屋のお掃除をしたり、お料理をしたりと長時間の滞在となる場合もあります。
介護の仕事では、色々な利用者さんのお相手をします。
【訪問介護の場合】
時に、認知症の方に「帰れーーーー!」と言われ、仕事を終えて涙目になることも。でも、その数十分の仕事が終わったら次の方へ。
その次の利用者さんは、とっても優しい方だったりします。雨の日では、タオルをもって待っていて下さる方も。寒い日には「寒かったでしょ」と言って部屋を温めて迎えてくださったり。
色んな人に会うから1日の波が大きい、だから1日で気持ちをリセットできます。
家にある物を使うべし、良い物は参考にすべし!!
訪問介護の最大の特徴だと思うのは、その利用者さんのお宅にある道具や食材を使ってケアをするということです。
例えばお掃除や洗剤、キッチン用品、調味料含めすべて「そのお宅の物を使う」それが原則です。
ですから、ハンドソープではなく石鹸を置いているようなお宅は、石鹸で手を洗うということになります。
お料理で言えば、もし醤油しかなければ、とりあえず醤油で味付けをします。(もちろん後日ご家族にお願いします)いつも同じ味になってしまうこともありますが、それはそのお宅の昔からの方針を優先します。
それでもたまには、「この調味料あるとバリエーションが増えますよ」と巧みに誘導する場合もあります。
あるお宅では、調味料が多すぎて「一体これはいつ使うんだ??」と思うくらい飲食店並みに調味料がズラーーっと並ぶお宅も。こんな調味料もあるんだ・・・と驚いたり。
逆に色々新しい物を知る機会でもあります。
「これはいい洗剤」
「この掃除機使いやすいなあ」
とか、参考にさせていただくこともあります。
私の場合は、自分宅の掃除機を探していましたが、ある利用者さんが使っていたコンパクトで軽い小回りの利く掃除機を使ってみて(自分がサービス時に使用してみて)同じものを買った経験があります。これはとても参考になった。
他の利用者さんの某メーカー、ダ〇〇ンも使わせてもらったことはありますが、少し音がうるさくて前述の掃除機を買うことにしました。
緊急事態発生!でも・・頼られるから嬉しい
訪問介護=自宅で介護をする ことです。
訪問介護は基本的には一人で判断し、動かなければなりません。緊急事態もあります。ただ施設と違って、それほど重病の利用者さんは少ないのが現状です。
それほど危険がなく自宅で生活できる状態、それが訪問介護の利用者さんと思っていただければいいです。
でもたまには、緊急事態に出くわすことも・・過去にはこんなケースを体験しました。
アイロン台を担架代わりに!!
以前、私が経験したのは、入浴介助の利用者さんでしたが、お湯から上がった後、洗い場で立てなくなってしまいました。その利用者さんは体が大きく、足も長く、とてもスタイルのいい方でした。足の筋力が低下していたので、疲れてしまったのです。
とにかくどうにかして更衣室まで連れていこうと、娘さんと考えました。
そこで、ひらめいたのが「アイロン台」でした。
娘さんに「アイロン台」はないですか?と聞いて出して頂き、ひとまずそれに乗ってもらい、洗い場まで出ることができました。
単純な発想ですが、担架(施設)=アイロン(在宅)かな。
あまりお勧めはできませんが、色々な発想は必要だなと思いました。
鍵を壊してください!!
あるときの緊急事態は、夏の暑い時期でした。
訪問したらご本人がいません??トイレかな?と思って行くと、なんだか声がします。「は、、、い」と力ない声が聞こえてきます。
あれ?と思ってトイレの下をのぞき込むと、足がみえました。どうやらトイレ脇で動けなくなってしまったようでした。緊急事態です!!
困ったことに、トイレはカギがかかったままでした。
さて、どうしよう??上から入るのは無理そうです。
カギは開かないので、私は瞬時に「鍵を壊してあけていいですか?」とご家族に聞きました。高齢のご家族も慌てていましたが、「鍵を壊して下さい!!」との返事。ドライバーを借りて鍵を外します。
意識はあり、何とか返事ができました。救急車の手配をしながら、カギを急いで外します。何とか鍵が外れて中を見ると、トイレ脇の隙間にすっぽりハマりこんでいました。そして、少し嘔吐しています。
一体どれくらいの間ここにいたのか? 汗でびっしょりパジャマが濡れています。
でも、そこで終わりではありません。横になったままの体を外に出さなければ、救急車にも乗れません。急いで、身体を引出します。それで何とか救急車にのることができました。
こんな緊急事態には人間はとんでもない力を発揮することがあります。
(かつて、私は足の骨折をした人を背負って病院まで運んだことがあります。)
人を助けるということはそういうことなのだと思います。
その利用者の為にできることを全力ですること、逆にそういう思いで仕事ができるありがたさも感じることができます。「緊急事態=大変なこと」ではなく、「その人を助けられる唯一の人になれる」のです。
実は、人見知りの人に向いている仕事です
介護職は女性が多い。一般的に女性の職場は色々めんどうくさい。性格がきつい人もいるし、噂話が広がるし・・ そういうのが苦手という人も多いです。
その点、訪問介護は人間関係が比較的自由です。
毎日、みんなのスケジュールは違います。時々一緒に訪問することはありますが、基本的に自分でスケジュール管理をして動きます。時間が違うから、一緒にいる時間がそれほどありません。
好きな時間に休憩をして、仕事が終われば自由に帰るので、周りの人に縛られることもありません。
私は「人見知りで大勢の人がいる場所が苦手」というスタッフの方がこの仕事に向いているように思います。(当社のスタッフのなかにも、おとなしいけれど絶大な人気を誇るヘルパーさんが沢山います。)
みんなと一緒に動くのは苦手とか、みんなに全部合わせのは苦痛という方にあっているのも訪問介護だと思います。
目の前の利用者さんに向いて、一生懸命仕事すること、それが一番大事だからです。
ホントはね? 内緒だよ? 私たちを勇気づけ、生き方を教えてくれる仕事
自宅というスペースは、心から安心できて、居心地のよい場所。それは年齢関係なく。高齢者の場合は特に、「自宅で最後まで生活したい」そう思っている方が多いと思います。
自宅で生活している利用者さんは、当然ながら自然体で生活しています。具合が悪ければ横になる、ご飯は好きな時間に食べる、好きなテレビを見て、ペットと戯れることも自由、もちろん段差やマットで滑って転ぶこともありますが、それがまさに「その人の生活スタイル」。
それだけ、心を許せる場所での仕事なので、時々ご家族にも言えない本音を聞かせてくれることがあります。
「娘に面倒かけたくないからね」
「転んだことは内緒にしておいて」
「お嫁さんとの仲がうまくいかなくて・・」
「長生きしても、仕方ない・・早くあの世へ行きたいよ」
たくさんの利用者さんに出会えることで、私達はいろんな人生経験をきくことができます。
高齢で生きる苦しみや身体の痛みは、これから先、私たち自身が経験することです。
そして人生の先輩たちは、後輩の私たちヘ、色々なアドバイスをくれるのです。
「まだまだ若いんだから、何でもできるよ」
「若いうちに、いろんな国に行きなさい、私みたいになったら、どこにも行けないよ」
「いつか、いい人に出会えるよ」
ご自宅に入らせていただくと、お部屋の雰囲気やインテリアで、その人自身を知ることができます。その方が歩んでこられた時代や趣味やご家族の仲の良い集合写真。その方の人生経験は、この仕事をしていなければ、絶対に聴くことが出来ない貴重なお話です。
時には、お部屋がとても荒れ果てていて、ずっと寂しい生活をされてきた方もいます。
私達の使命・・それは、
今よりも快適に過ごしていただき、人が来ることで生活に張り合いがもてるように。
誰かが訪ねてくれるんだと安心してもらうこと。
「ありがとう、また明日!!」
この一言は、私たちが利用者さんに安心してもらう言葉。
そして、毎日仕事をする私達に大きな力をくれる言葉。
キツイ、汚い、移動が大変・・・
この仕事はそう思われることが多いですが、今こうしてこの仕事を続けている人は、その壁を超えて、全く違う思いをもって仕事をしている人達です。
やめられないくらい、やみつきになる魅力がこの仕事にはあるのです。