いつも皆様、お世話になっています。吉祥寺店の店長です。
私は、入社後、吉祥寺店で勤務スタートし、ヘルパーとして右も左も分からない状態で、試行錯誤しながら過ごす日々でした。少し慣れてきたところで、当時の渋谷店(現・代々木公園店)へ異動となりました。
地域が違うと人も違うもので、ご利用者やヘルパーさんの雰囲気もガラッと変わりました。
戸惑いもありましたが、またそこが面白い。その後も池袋店や当時の下北沢店で勤務しましたが、どこの店舗でも必ず1人は印象深いご利用者がいらっしゃいます。今回はその中でも特に印象深い方のお話です。
半身まひだけれど、自分のことは自分でやりたい方
その方は、私が介護福祉士の資格に合格し、サービス提供責任者としての業務を任されている時にお会いしました。
いつも、仕事の依頼をいただくときは、ケアマネージャーから電話や直接伺うことが多いのですが、この方はケアネージャーさんが事務所を訪問されての相談でした。
このご利用者は、気をつけるべき事前情報がかなり細かくあったので、初めて伺った時はとても緊張したのを覚えています。
ご本人はバリバリ仕事をしてきた方で、空手もやっていたという体格のいい、見るからに体育会系。
脳梗塞を患われて、半身麻痺がありました。また、元々の性格もとても厳しいのですが、後遺症から感情的になりやすい方で、しかも怒り出すと、手が出てしまう可能性がある方でした。
しかし、一人暮らしで、不自由な体でも極力ご自身でできることはしようとして、むしろ当然と思っている方でした。
まるで、体育会系部活の家事の手伝い・・・
主な仕事内容は、掃除や買い物代行、洗濯、でした。
内容的にはよくある家事の内容なのですが、ご本人とのコミュニケーションが大きな問題で、これがなかなか難しい。
家事はそれぞれのお宅のやり方があり、実はとても難しく奥の深いサービスです。コミュニケーションが取れていれば、ご希望を聞いて合わせていくことが可能ですが、今回はなかなかそうもいきませんでした。
初めは「教えるから大丈夫」と言ってくださっていたのですが、
「一度言ったら覚えなさい!!」というスパルタ式。
間違ったり、聞き返そうものなら、怒鳴られてしまいます。
呂律が回りづらく、聞き取りづらい話し方をされる方です。逆に、こちらがはっきり言わないと聞き取っていただけない。
自然とケアの最中は、
「○○くん!!」
「はい!よばれましたか!××ですか!」
などとお腹から声を出し合う、さながら運動部の部活のような状態でした。
また仕事中に手が止まったり、考え込んでしまう姿が見えると怒鳴り声が飛んできます。
初めは、とてもこだわりがある人で、「厳しい・・辛いなぁ・・・」と感じていたのですが、外部からお客様がいらっしゃると、皆さん「先生!」と呼ばれ、お話をされる様子が見られました。
銀行などの偉い人が来ても同様で、ご本人は私に対するのと同じような厳しい態度で接していらっしゃいました。
その姿をみると、「ああ、この人は誰に対しても同じ態度姿勢で接する人なんだな」と思い、辛さが半減するのを感じました。
男なら、もっと頭を使って、貪欲に仕事をしろ!!
仕事に慣れ、部活の声出しのような会話にも慣れてきた頃に、ご本人から、ご自分が昔頑張って仕事をしてきたことなど、病気になる直前までバリバリ働いてきたことなどを話してくださるようになってきました。
「男なら、もっと頭を使って、貪欲に仕事をしろ!!」と叱咤激励をされました。(笑)
その頃から、初めは理不尽に怒られたと思ったことも「なぜ怒られたのか?」という理由がわかるようになってきました。
- ①時間を守る
- ②挨拶は、はっきり大きな声で (相手に聞こえなければ意味がない)
- ③勝手な判断はせず、確認する(他人の家なのだから)
- ④利用者が何を希望しているか、先回りして考える
- ⑤効率よく、質が高いものが提供できるかを、常に考えていく
- ⑥仕事をもっと良くするにはどうしたらいいか、を考え続ける
この仕事をする上でも、社会人としても、基本的なことを教えていただけたと思います。
そして、教えてくれながら、「当然できるものと思っているよ、君はプロなんだろ」と。
その時間は、緊張感で一杯でしたが、とても中身の濃い時間だったのです。
あるとき、ご本人から「もし君が困ったらいつでも言いなさい、助けてやる」と言ってくださったことがあり、冗談かなとも思いましたが、雑巾掛けをしながら、目頭が熱くなりました。
お伺いする最後のころには、退室前にガッチリと握手をしてくださるようになりました。
とても厳しく、緊張感のあるご利用者様でしたが、私を社会人として、仕事人として、大きく成長させてくださった恩師だと思っています。
この方に教わったことを忘れずに、プロとして考え続け、今以上に成長していきたいと考えています。